五戒(岩波 仏教辞典 第二版)

在俗信者の保つべき五つの戒(習慣)。 不殺生・不偸盗・不邪淫・不妄語・不飲酒の5項からなる (東晋の超『奉法要』には五戒として、不殺・不盗・不婬・不欺・不飲酒を挙げる)。 原始仏教時代にすでに成立しており、他の宗教とも共通した普遍性をもつ。 しかし行為に関する外形的制約にすぎず、心の動きは問わない。 この点で十善戒に劣り、大乗興起の頃は小乗の持する戒として重んじられなかった。 大乗仏教中期(3世紀頃)以降になると教団運営の主導権が比丘に移り、七衆の波羅提木叉の第一として大・小乗を兼受することが一般化し、再び重視されるようになった。 今日でも在家信者の戒の代表的な地位を占めている。 比丘となるために受戒する場合もこの五戒から受け直すことになっており、いずれの場合も三帰依の後に受けるのを通例とする。